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Warrior On the Edge of Time SUPER DELUXE BOXSET LIMITED EDITION / Hawkwind

 

perucho.hatenablog.com

 

ではさっそく詳しい内容について書いていきたい。

 

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アルバムについて

"Warrior On the Edge of Time"は、United Artistsから1975年5月にリリースされたHAWKWINDの5thアルバム。UKアルバム・チャートで13位を記録、最高傑作に挙げるファンも多い彼らの代表作のひとつである。当時東芝EMIから国内盤もリリースされ、邦題は『絶体絶命』だった。
長らく公式なリイシューが行われていなかったが、今回(2013年の話だけど)ようやく実現した。一時期はあまりの再発されなさにマスターテープ紛失との噂がまことしやかに語られていたが、あくまで権利関係の問題だったようだ。
なおリリース元となるAtomhengeは近年Esoteric Recordings傘下に立ち上げられたHAWKWIND専門レーベル。以前はRock Fever Music等の非公式盤が横行し全体的に質の低いCDばかりだったHAWKWINDであるが、Atomhengeの丁寧なリイシューによって状況は一気に改善された。ありがてえありがてえ
 
  • Dave Brock: Guitar, Synthesiser, Bass Guitar (A4), Vocal (A1, A2, A5, B1, B6)
  • Nik Turner: Tenor and Soprano Sax, Flute, Vocal (B2, B5)
  • Lemmy: Bass Guitar
  • Simon House: Mellotron, Moog, Piano, Synthesiser and Violin
  • Simon King: Drums and Percussion
  • Allan Powell: Drums and Percussion
  • Mike Moorcock: Vocal (A3, B4)

デイヴ・ブロック、ニック・ターナー、サイモン・キング、レミーに加えて、前作から引き続きサイモン・ハウスがヴァイオリン、メロトロン、シンセサイザーを担当。さらにキングの怪我の療養中に代理を務めたアラン・パウエルがそのまま残留、ツイン・ドラム体制となった。

まず1975年1月にOlympic Studiosで3曲がレコーディングされ、うち2曲"Kings of Speed"と"Motorhead"は先行シングルとして3月にリリース(残る1曲は"Spiral Galaxy 28948")。他のトラックは3月にRockfield Studiosでレコーディング、その後Olympic Studiosでミキシング作業が行われた。

 

ちなみにこのアルバムリリース直後のUSツアーにおいて、もはや歴史的とすら言えるレミー解雇事件が起こる。USツアー中カナダでアンフェタミン(スピード)所持により拘留されたレミーを、バンドはツアー中止を恐れ即座に解雇。結果的に彼がメンバーとして参加した最後の作品となった(後に和解してゲスト参加したりはしている)。

またダンサーのステイシアも結婚を機に脱退。このアルバムに伴うツアーが最後の参加となった。

  

さて、今作はイギリスの小説家マイケル・ムアコックの『エターナル・チャンピオン・シリーズ』を題材とした、一種のコンセプト・アルバムである。
HAWKWINDは1972年の3rdアルバム"Doremi Fasol Latido"においてThe Saga of Deremi Fasol Latidoと題した叙事詩(?)のイメージイラストを掲載するなど、以前よりムアコック作品からの影響を匂わせていたが、ここにきて本格的に取り組むことなった(そもそもホークウィンドという名前自体も、多分にムアコック作品を意識したもののようだ)。
アルバムに含まれる3曲のポエトリー・リーディングはムアコック本人の詩により、うち2曲に関しては本人が朗読を担当している。また"Kings of Speed"も、もともとムアコックが自身のソロ・プロジェクトのために作詞した楽曲だそうだ。なおムアコックは完全にタダ働き状態だったようで、インタビューでちょくちょくその件に関して愚痴っている。
ジャケット・デザインとしてクレジットされているEddie Brashは、前作までを手掛けたバーニー・バブルスの変名。イギリスのオリジナル盤では4面見開き、裏面に『エルリック・サーガ』に登場する「混沌の盾」をあしらうという気合の入ったものであった。
 
音楽的には前作の発展形と呼べるもので、以前は好き放題やってる感があった各楽器がしっかりまとまり、よりメロディ(というか歌)を聴かせる方向へと変化した。デイヴ・ブロックのヴォーカルには日本のファンに諸行無常と表現されることもある独特の調子があり、情感を込め過ぎることも淡々とし過ぎることもない絶妙な距離感で物語を歌い上げる。また飛び交うシンセ等電子音が控えめになった代わりにメロトロンが響き渡り、ヒロイックファンタジーらしい壮大かつどこか悲劇的な雰囲気を盛り上げている。サイモン・ハウスは"Magnu"でのアラビア風なプレイをはじめヴァイオリンも効果的に用いており、八面六臂の活躍ぶりである。
アルバムの構成的にも、ひとつの大きな流れを感じさせるA面と、より幅広い曲調を配するB面という差別化が図られている。前作から取り入れられたこの構成、本人たちも手応えを感じたのか以降レコード時代を通して度々登場することになる。
 
 

音源について

今回取り扱うSuper Deluxe Boxset Limited Editionに収録されているのは以下の音源となる。

  • CD1: 新規リマスター音源+8曲のボーナストラック(うち5つはこれまで未発表)
  • CD2: Steven Wilsonによるマルチトラック・マスターからのステレオ・リミックス音源+5曲のボーナストラック(うち2つが未発表)
  • DVD: Steven Wilsonによるステレオ及び5.1chサラウンド・リミックス音源。オリジナル・ステレオ・マスターからの24bit/96kHzフラット・トランスファー音源
  • LP: オリジナル(カッティング)マスターからカットされた180g重量盤

 

リマスター
マスタリング・エンジニアはThe Audio Archiving CompanyのBen Wiseman。UniversalやEsoteric Recordingsで多くのアルバムを手掛ける人物であり、Atomhengeにおけるリマスターのほぼすべてを担当している。
The Audio Archiving Companyのリマスターにはマスター・テープ由来のノイズを除去しつつオリジナルのバランスを壊さない範囲でクリアかつ現代的な方向へ調整を行う、という一貫した方針があるように感じる。
今作のリマスタリングもその方針に沿った、安定した仕上がりとなっている。

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DR値と"Assault & Battery / The Golden Void"の波形

CDの器からはみ出さない(=潰さない)範囲で音圧や各曲の音量バランスが整えられている。Ben Wisemanのリマスターは基本的に-0.05dBをピークの基準としているようだ。ちなみに同じThe Audio Archiving CompanyのPaschal Byrneはピークを-0.10dBに揃えていることが多い。

 
ステレオ・リミックス
Steven Wilsonは自身もPORCUPINE TREEやソロを中心に活動するミュージシャンであり、近年KING CRIMSONXTC等のサラウンド及びステレオ・リミックスも手がけ高い評価を得ている人物。
奇をてらったり現代的な音作りを意識し過ぎたりするようなことのない、オリジナルのバランスを大切にしつつ再構成した仕上がりとなっている。これは彼の手掛けたステレオ・リミックスに共通する特徴だ。
"Assault & Battery"や"Spiral Galaxy 28948"のオリジナルで少々高音がキツかったシンセや、"Magnu"間奏部分でヴァイオリン、サックス、ギター、シンセが折り重なり混沌となる場面が整えられ、格段に鳴らしやすくなった。
このボックス収録の音源のなかで、もっとも余計なことに気を取られず素直に没頭できるのがこのステレオ・リミックスだと思う。
 

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DR値と"Assault & Battery / The Golden Void"の波形

リマスターよりほんの少しだけDR値が大きいが全体としては大差ない程度。"Assault & Battery / The Golden Void"のみピークが0.00dBに達している。

 
5.1chサラウンド・リミックス
ステレオ・リミックスと同じくSteven Wilsonが担当。
聞くところによると、今作はもともと製作時のマルチ・トラックのトラック割り等が独特で、リミックスにあたっての制約が多かったようだ。
実際聴いてみると"Assault & Battery"や"Magnu"といった目玉となる長尺曲において、普段Steven Wilsonが行うようなマルチ・チャンネルを効果的に活用した演出はほとんど出てこない。これらの曲はどちらかといえばあまり音を動かさない、オーソドックスというか控えめなミックスという印象を受ける。てっきり飛び交うシンセやツイン・ドラムを使った派手なものになるかと期待していたので、率直に言って物足りない仕上がり。
その一方で、3つの朗読曲や"Spiral Galaxy 28948"においてはいつもの彼らしい目くるめく音空間が現れている部分もある。特に"Spiral Galaxy 28948"でドラムのフィルイン(タム回し)がリアにまわり込んでくるような場面を聴くと、やっとSteven Wilsonのリミックスを聴いているという充足感が出てきたり。
また"Kings of Speed"は例外的にほとんどの楽器がフロントに定位しているように聴こえ、楽器間の分離もあまり良くなくもやっとした印象を受ける。
おそらくはこうした楽曲ごとの印象の違いが、素材となったマルチトラック・テープからくる制約に由来するのだろう。
まとめると、多少欲求不満になる部分はあるものの全体としては十分聴き応えのある、楽しめるサラウンドに仕上がっていると思う。"Assault & Battery"や"Magnu"も、マルチならではの分離の良さがあり元々の持ち味はしっかりと活かされているので、自分があれこれ挙げた不満点はどちらかと言えば勝手に期待したプラスアルファが無かった、というような種類のものである。
 
オリジナル・マスター
ここまでに述べたバランスの悪さがそのまま出ているのが、当然ながらこのオリジナル・マスターだ。加えて一部ミキシング由来と思われる歪みも確認できる。
しかし中低域の滑らかさはもとより、ここまであくまで問題点として扱ってきた空間を引き裂くがごときアンバランスなシンセの高音さえも、これはこれで他に代えがたい魅力であるというのもまた確か。
これはいわば原典とも呼べる音源であり、これと比較して他の音源について述べることはできても、この音源自体に対してはなんら言葉を持たないということが言えるかも知れないし、調子に乗ってテキトウなこと言ってるだけかも知れない。そもそもこういうことを言い始めたら英初版のジョージ・ペッカムによるPORKYカットがどうこうって話になってしまう。
 
LP
ジャケットはオリジナルを可能な限り再現しており、手にとって眺めた際の満足感が大きい。インナーはもちろん、レーベルも元の雰囲気を残したデザインになっておりこだわりを感じる。盤そのものも180g重量盤。
発売前のアナウンスによるとオリジナルのカッティング・マスターを元に制作されているという。しかしボックスには"Mastered from the original stereo master tapes"と表記されている。ふつうに考えていわゆるマスターテープとカッティング・マスターは別物のはずなのだか、詳しいことはよくわからない。
 
実際に再生してみると、レコードとしてはかなりカッティング・レベルが低く音が小さい。アナログにおいては盤に刻まれた音が小さいということは相対的にノイズが大きいということでもあり、けっこうツラい。
静音性の高い高級オーディオではまた違った感想が出てくるかも知れないが、自分の環境ではこれはちょっとツラいところである。小さい音量で鳴らす分にはそこまでツラくないのだが、せっかくのレコードをがっつり音量上げて鳴らせないというのはけっこうフラストレーションが溜まってツラいところだ。
ちなみにAtomhengeからRSD限定でリリースされた"Kings of Speed"の7インチ・シングルも同じようなカッティングだった。ツラい
 

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マトリクスは機械打ち。チェコのGZ Media製か
 
ボーナストラック
CD1-11"Motorhead"はシングル"Kings of Speed"のB面曲。レミー単独作で、彼のごついベースがぐいぐいと牽引しハウスのヴァイオリンがのたうつ名曲である。
Motorheadはスピード・フリークを指すスラングであり、まさにこの薬物所持が原因でHAWKWINDを追い出されたレミーは自らのグループにもこの名を冠することとなった。
このトラックはBen Wisemanによるリマスターのみで、Steven Wilsonのリミックスが作成されなかったのが残念でならない。マルチトラック・テープの状態やレコーディング工程等に問題があってリミックス出来なかったという可能性もあるが。
 
CD1-12~16の未発表音源は1975年3月のRockfield Studiosで収録されたデモや別テイク。
 

CD1-17"Motorhead (Dave Brock Vocal Version)"は1981年にFlicknifeレーベルからシングルとしてリリースされたバージョン。

オリジナルの"Motorhead"はレコーディング当日にレミーが現れず急遽デイヴ・ブロックが歌い、その後レミーがヴォーカルを録り直してリリースされたという経緯がある。

ヴォーカルをその際に残されたブロックのものに差し替え、その他ちょこちょことオーバーダブを加えてでっち上げられたのがこのバージョン。聴いた感じリミックスというより本当にオーバーダブって印象なので、元々オリジナルからして4トラック程度のベーストラック+リード・ヴォーカルその他みたいな少ないトラック数しか使ってなくて、だからこそSteven Wilsonもリミックスしようがなかたっんじゃないかとか妄想してしまう。

 

CD1-18"Kings of Speed (Instrumental Version)"は基本的にアルバム・バージョンからヴォーカルや一部楽器を省いたもの(実際には逆で、それらを加える前のものだろう)。

1981年にFlicknifeレーベルの第一弾としてリリースされたHAWKWIND ZOOのEPが初出で、以降様々なコンピに収録されている。またその際にライブ・バージョンと銘打たれており、それが"Silver Machine"のようにライブでの演奏をマルチトラック録音したことを指しているのか、スタジオで一発録りしたことを指しているのか不明だった。今回の"Recorded at Olympic Studios, Barnes in January 1975"というクレジットを見る限りは、スタジオ一発録りの方を指すものだったと思われる。このトラックにヴォーカルやヴァイオリン、キーボードを加えてアルバム・バージョンを完成させたのだろう。

こうした製作工程にSteven Wilsonのサラウンド・リミックスがこの曲だけぱっとしなかった原因があるかも知れない。というかさっき書いた"Motorhead"と同じような状態だったのでは?

さらに妄想すると、"Motorhead"に関してはこのInstrumental Versionにあたる段階のテープが現存しておらず、それゆえにリミックス対象から外されたという可能性もあるのではないか。まあ所詮妄想だけど

ちな今回のリイシューでけっこう音質が向上している。

 

CD2-11及び12も1975年3月Rockfield Studiosの収録とクレジットされている未発表音源。CD2-11"Motorhead (Instrumental Demo)"はふつうに考えるとOlympic Studiosでスタジオ・バージョンを収録する前に録られたものだと思うんだけど、どうなんですかね……

 

CD2-13"Watchfield Festival Jam"。これはトラック名からもわかる通り、同フェスにおけるライブ録音。

ウォッチフィールド・フェスティバルは1975年8月23日、HAWKWINDがヘッドライナーを務めたレディング・フェスティバルの翌日に開かれたフリーフェスティバルだった。

ステイシア最後のステージでありこの後バンドに復帰するロバート・カルバートがゲスト参加した前日のレディングとは打って変わって、ここではデイヴ、ニック、アランそしてレミーの後釜として加わった元PINK FAIRIESのポール・ルドルフという最低限の編成で、即興中心の演奏を繰り広げたようだ。

このトラックはタイトル通りのジャムながら定番曲である"You Shouldn't Do That"が骨格になっている。録音状態は良くないがごりごりと勢いのある演奏でなかなか楽しい。最後"Brainstorm"に入るところでフェードアウトするのが残念。

この音源の初出はSamuraiレーベルから3枚に分けてリリースされた"Anthology"シリーズのVolume IIだった。このシリーズ、なんかレーベルのオーナーがバンド側にロイヤリティまったく支払わなかったとか、勝手に音源の権利を売却しちゃったとか、その結果バンド側と無関係なコンピが乱造されちゃったとか、いろいろ曰くつきだったりする。

ある意味では今回やっとまともにリリースされたとも言えるだろう。

 

CD2-14"Circles"及びCD2-15"I Am the Eye"。これら2曲もウォッチフィールド・フェスティバルにおける即興演奏で、録音状態も同じようなものである。

どちらも80年代前半にカセットテープのみの通信販売でリリースされた"Weird Tapes"シリーズ第3巻に収録されていた(後にCD化もされている)。オリジナルでは"I Am the Eye"の後に"Slap It On the Table"と題された短いお遊びトラックが入っていたが、ここでは省かれている。

また"Circles"は後にアルバム"Levitation"に収録される"The Fifth Second of Forever"の土台になったと思われる。

 

総評

今回のリイシューはこのボックスセットのほかにリマスターCD単品、リマスター及びリミックスCDとDVD付き3枚組が用意されている。
ここまでに書いた音源のうちボックスじゃなきゃ手に入らないのはレコードのみ、あとはオマケのポスターとかそういう系の違いなので、とりあえず音源をおさえておきたい方は3枚組のを買っておけばよいかと。ていうか買うべきかと。買いましょう。
個人的には普段どんな気になるものでも予約どころか発売日に買うことすらしない自分が予約したぐらい待ちに待ったタイトルなので、ボックスが入手できて満足です。ただ以前使っていたBDプレイヤーではなぜかこのDVDだけ再生出来ず、BDプレイヤー買い換えてリミックスのハイレゾとフラット・トランスファーが聴けるようになり、さらに最近やっとAVアンプ導入してサラウンド環境構築して5.1chミックスが聴けるようになって、という感じでわりと紆余曲折ありました。今日やっと記事を書き上げたけど、結局ブログの更新自体1年以上ぶり、発売時の記事からだと3年以上経っちゃってるわけでしてね。むしろなんで今更書く気になったのかってレベルだろこれ。
 

 

Warrior On The Edge Of

Warrior On The Edge Of

 

リマスターCD。ボーナストラックは"Motorhead"のみ

 

Warrior On The Edge Of

Warrior On The Edge Of

 

リマスターCDとリミックスCDに加えてリミックスとフラット・トランスファー収録のDVDが付いた3枚組。ここで紹介した音源はLP以外すべて入ってる

 
 

White Flags 12" / Blue Öyster Cult

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White Flags 12" / Blue Öyster Cult (1985)

A: White Flags
B1: Shooting Shark
B2: Rock Not War

 

1985年12月リリース。BLUE ÖYSTER CULT(以下BÖC)の10thアルバム"Club Ninja"収録曲で、イギリスにおける先行シングル。

アメリカでは"Dancin' in the Ruins","Perfect Water"の2曲が、イギリスではこの"White Flags"がそれぞれシングルとして選ばれた。

 

BÖCのシングルは7"が中心だった(特にUSで12"はプロモのみ)が、イギリスではこの"White Flags"をはじめ数枚が12"でもリリースされた。

アルバム"Club Ninja"はUS盤とUK盤でミックスが異なり、ここに収録されている同アルバムからの2曲はUK Mixである(アルバムのUK Mix自体は未聴)。ドンシャリ気味で派手なUS Mixと比べると落ち着いたサウンドという印象。基本的な傾向はMSG "Built to Destroy"やWHITESNAKE "Slide It In"のUS盤UK盤におけるミックス違いと共通するものがある(そこまで極端じゃないけど)。

 

 

・White Flags

US Mixはフェード・アウトするが、この12"はフェードせず演奏の終わりまで収録されている。このエンディングがアルバムのUK Mixと共通なのか、それとも12"独自のものなのかどうかは不明。

なお7"の方は3分台に収まるようエディットされていた。

YouTubeにはUS Mixしか無かった。

 

・Shooting Shark

前作"The Revölution by Night"から。

前作を代表するヒット曲であり当然イギリスでもシングル・リリース済み。しかし1983年当時のリリースはエディット版を収録した7"が中心で、12"は特別仕様の限定盤のみだった。

 

・Rock Not War

US盤ではタイトルが"Make Rock Not War"だが、UK盤ではアルバムを含め"Rock Not War"表記となっているようだ。

この曲もエンディングの繰り返し部分がUS Mixより長くなっていおり、これがUK Mixのアルバムと共通なのかどうかわからない。

例によってUS Mix。

 

 

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CBS、TA 6779。

 

"timtom"はCBS Studiosのカッティング・エンジニア、ティム・ヤングのクレジット。

UK Mixの落ち着いたサウンドと良好なカッティングが合わさって、爆音で鳴らしやすいシングルに仕上がっている。"Club Ninja"の2曲はもちろん、"Shooting Shark"も12"映えするトラックなので収録は素直に歓迎できるどーせ他に丁度いいマテリアルもないだろうし

 

 

Club Ninja

Club Ninja

 

"Club Ninja" の記事で触れたように、リマスター盤はUS Mixが採用されている。旧英盤CDはUK Mixを収録している可能性があるものの確証はない。どうも英国で流通したCBS盤CDは日本プレスらしいので、尚更わからない。

 

Club Ninja / Blue Öyster Cult

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Club Ninja / Blue Öyster Cult (1985)

A1: White Flags
A2: Dancin' in the Ruins
A3: Make Rock Not War
A4: Perfect Water
A5: Spy in the House of the Night
B1: Beat 'Em Up
B2: When the War Comes
B3: Shadow Warrior
B4: Madness to the Method

Produced by Sandy Pearlman
Blue Öyster Cult:
 Eric Bloom - Vocals, Guitar

 Joe Bouchard - Bass, Vocals, Guitar
 Donald "Buck Dharma" Roeser - Vocals, Guitars, Keyboards
 Jimmy Wilcox - Background Vocals, Percussion
 Tommy Zvoncheck - Synthesizers, Piano, Organ

 Tommy Price - Drums
 Phil Grande - Additional Guitars
 Kenny Aaronson - Additional Bass

1985年12月10日リリース。ニューヨークのカルチャーを語る上で避けては通れない偉大なバンドBLUE ÖYSTER CULT(以下BÖC)、その記念すべき10作目である。この記事には誇張された表現や筆者の妄想が含まれている可能性有
 
黒衣の宰相サンディ・パールマンが再び自らプロデュースを執り行い、AORに近い洗練された雰囲気が漂うハードロック、所謂メロハーの傑作となった。
しかし同時に、このアルバムはBÖCがその結成以来もっとも不安定な時期に制作されたものであり、その低迷を象徴する作品という一面もある。
1983年のアルバム"The Revölution by Night"制作後、ドラマーのリック・ダウニーは脱退の意向を固め、ツアー終了後の1985年1月に脱退。
1985年2月のカリフォルニア・ツアーはオリジナル・メンバーであるアルバート・ブーチャードが一時的に復帰してしのいだものの、そのまま合流とはいかずツアー終了とともに再び離脱。
こうした状況下で疲弊したのか、キーボーディストのアラン・レイニアも一時的にバンドを離れ休暇に入ってしまう(脱退とも報じられたが、あくまで復帰を前提とした離脱だったようだ)。
そうこうしているうちにドラムとキーボード不在のままアルバム制作に取り掛からなければならなくなり、バンドは急遽二人の代理メンバーを雇用、外部ライターや複数のセッション・ミュージシャンに助けられつつレコーディングに臨むこととなった。
以上が"Club Ninja"に至る経緯である。
 
代理として新たに加入したメンバーは、二人ともニューヨーク界隈のセッション・ミュージシャンである。
ドラマーのジミー・ウィルコックスはパティ・スマイスのSCANDALリック・デリンジャーのバンドでプレイしていた人物で、UTOPIAのドラマー、ジョン・"ウィリー"・ウィルコックスの兄弟。
キーボーディストのトミー・ズヴォンチェックはPiLの1983年日本公演に同行した人物。どうやらBÖCへの加入より以前の段階で、当時散発的に行われていた"Imaginos"セッションに関わっていたようだ。彼は2007年に初のソロアルバム"ZKG"をリリースしている。このアルバムにはゲストでバック・ダーマが参加、ギターソロを弾いてるらしい。
彼らに加えてトミー・プライス(dr)、フィル・グランデ(gt)、ケニー・アーロンソン(b)という名の知れた人物たちがクレジットされている。特にトミー・プライスは、ジミー・ウィルコックスのクレジットが"Percussion"なのに対し"Drums"とクレジットされており、むしろ彼が主要な役割を果たしていた可能性すら考えられる(もちろん実際のところは不明だが)。
なお、ジミー・ウィルコックスとトミー・ズヴォンチェックの二人は"Club Ninja"ツアーが終了する1986年9月までバンドに留まった。
 
 
このアルバムは全9曲のうち4曲が外部ライター提供により、さらに3曲が外部ライターとの共作となっている。残る2曲もリチャード・メルツァーとサンディ・パールマンの詩によるもので、前作にはかろうじて存在したメンバーのみによる楽曲が完全に姿を消した。
 
・White Flags

アルバムで1,2を争う名曲であるが、BÖCがオリジナルではない。

作詞作曲を手掛けたLeggatt Bros.のヒューイーとゴードンは、1982年にカナダCapitolからLEGGATというバンド名で"Illuminations"というタイトルの2枚組アルバムをリリースしており、"White Flags"のオリジナルもここに含まれる。
 
彼ら、特にヒューイー・レガットはNUCLEUSやA FOOT IN COLDWATERといったバンドで60年代から活動しており、カナダではわりと知られたミュージシャンらしい(無知)。
兄弟はサンディ・パールマンにその才能を注目され一時彼の415 Recordsと契約を交わしたものの、そちらは残念ながら実を結ばなかったようだ。
 
・Dancin' in the Ruins
作詞作曲はラリー・ゴットリーブとジェイソン・スキャンロン。ラリー・ゴットリーブは1982年にFOUR TOPSの"When She Was My Girl"でグラミー賞にノミネートされたシンガーソングライターである。ジェイソン・スキャンロンのほうは残念ながら詳細不明。
ともかくこの曲は、アルバムから最初のシングルとしてPVも制作され、ラジオとMTVを中心にヒットしBillboardの"Top Rock Tracks Radio Airplay"チャートで1986年3月に最高9位を記録、底力を見せつけた楽曲なのである。
 

なんか『ニューヨーク1997』あたりを思い出す世界観。あとエリック・ブルームが頭に巻いてるバンダナの文字が気になる。
 
・Make Rock Not War
作詞作曲はボブ・ハリガン Jr.。彼はJUDAS PRIESTにも"(Take These) Chains"等なかなか良い曲を提供している。
 
・Perfect Water
後年のライブ・アルバムでもとり上げられた傑作で、バック・ダーマとジム・キャロルの共作である。
ジム・キャロルはニューヨークの詩人で、アラン・レイニアが共通の友人であるパティ・スミスを通して知り合ったらしい。ジムは80年代前半に自らのバンドを率いて音楽活動も行っていたが、アランはそれを度々サポートしていたようだ。そういった意味では、アランの置き土産とも言える楽曲である。
なおジムの著作家としての代表作は、彼の少年時代の日記をまとめた"The Basketball Diaries"(邦題『マンハッタン少年日記』)であろう。
 
・Spy in the House of the Night
バック・ダーマとリチャード・メルツァーの共作。リチャードの詩"Out of Smokes"を元に、バック・ダーマが曲を付けたと思われる。
リチャード・メルツァーは言うまでもなくBÖCの主要な協力者のひとりであり、"Out of Smokes"は後に彼の"Holes: A Book Not Entirely About Golf"という「らしい」といえば「らしい」タイトルの本に収録された(出版は1999年)。
 
・Beat 'Em Up
作詞作曲は"Make Rock Not War"と同じくボブ・ハリガン Jr.。
この曲はBÖCに先駆けてリー・アーロンがアルバム"Call of the Wild"でとり上げている。そちらのリリースは1985年6月で、プロデュースにボブ・エズリンが関わっていた。
 
・When the War Comes
ジョー・ブーチャードとサンディ・パールマンの共作。このアルバムで唯一前作までの(B級映画っぽい)雰囲気を残した楽曲。
オープニングでなにやら喋ってるのはラジオ・パーソナリティとして有名なハワード・スターン。なんでもエリック・ブルームの嫁が彼の親戚だったとかそういう繋がりらしい。
 
・Shadow Warrior
エリック・ブルーム、バック・ダーマに加えてエリック・ヴァン・ラストベーダーが関わった楽曲。
エリック・ヴァン・ラストベーダーは数多くの著作をもつ小説家で、エリック・ブルームが彼の小説"The Ninja"(1980)を読んでコンタクトをとったことからこのコラボレーションに繋がったようだ。
"Shadow Warrior"とはすなわちニンジャのことであり、"Club Ninja"というアルバムそのものが、ラストベーダーの"The Ninja"に着想を得て本人の協力の下制作された作品であるとも考えられる。
なお"The Ninja"は中上守氏の翻訳で『ザ・ニンジャ』というそのまんまな邦題で日本でも出版されており、これがマンガ『キン肉マン』に登場するキャラクター、ザ・ニンジャ直接の元ネタであることは言うまでもなく今思いついたでたらめである。しかし翻訳の出版が1982年2月、キン肉マンのザ・ニンジャ初登場回が1982年43号と、タイミング的に必ずしも関連性がないとは言い切れないと言えなくもないということが言えるかもしれなくもある。
 
・Madness to the Method
バック・ダーマとディック・トリスメンの共作。
バック・ダーマとディック・トリスメンは80年代初頭に知り合って意気投合し、それ以降一緒に曲作りを行っていたらしい。バック・ダーマはディックのいくつものレコーディングでプロデュースやギターを手掛けているそうだが、残念ながらネットにはディック・トリスメンに関するディスコグラフィーは見当たらず、詳細がわからない。一時期彼のサイトが存在したようだがすでに消えてしまっている。
なおBÖCの今のところ最新スタジオ・アルバムである"Curse of the Hidden Mirror"(2001)にも、このコンビによる楽曲"Here Comes That Feeling"が収録されている。良い曲なので未聴のかたは是非。
 
 

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米盤のインナー。

 

"Club Ninja"は1986年2月22日から14週に渡ってBillboard's Top 200 Albumsにチャートイン。最高63位を記録し175000枚以上を売り上げた。
だが、前作と同じくゴールド・ディスク獲得には至らず。当時BÖCは"Fire of Unknown Origin"、"Extraterrestrial Live"と続いたゴールド・ディスクが前作で途絶えたことでレコード会社からの風当たりが強くなり、厳しい立場に置かれていた。このアルバムはバンドにとって内外ともに苦しい状況下で制作され、その上で少なくとも明確な成功をおさめることには失敗したのである。バンドはこのアルバムを最後に、悪く言えばメジャー・レーベルから売上を期待されるような存在ではなくなり、別の言い方をするならメインストリームでの活動に見切りをつけ、よりマイペースなライブを主軸とした活動にシフトしていくことになる(そして、その活動は現在も続いている)。
 
何故"Club Ninja"は失敗したのか。
その理由として、この作品に触れた人々の一部が自覚症状のない軽微なニンジャ・リアリティ・ショック(NRS)を起こし、なかでも社会的影響力の強い者(例えば評論家)たちが自己防衛のため感情的反発や徹底的な無視といった反応を示した結果正当な評価を得る機会が失われた、という可能性があげられる。
このレコードはその道の専門家が高度な技術を用い細心の注意を払って制作したものである。盤に刻まれた古のものたちと影の戦士に纏わる恐るべき真実は巧妙に隠蔽されており、一般人にはそれと認識できず正気度ロールも必要ない。にも関わらずこのような結果になったのは、結局のところBÖC側の想定をはるかに超えた評論家連中のカラテ不足という体たらくに帰結するのだと言える。彼らにはセンセイのもとでトレーニングが必要であり、BÖCはこのレコードのインナーで寛大にもそのためのヒントを示している。

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"Training by: Karate Center of Champions, New York, Sensei Tokey Hill, Sensei Howard Frydman"。

このカラテ・センターは1982年から1992年にかけて、グレートネックのノーザン・ブルーバードに面して存在していたようだ。Google Mapsを見たら去年の時点ではブライダル関係の店になってるっぽい。

 
 
このアルバムの米国初版LPはカタログ#FC 39979だが、手持ちのレコードはFC#のジャケットにバーコード付きシールを貼ってPC#に変更されている。

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Columbia RecordsのPC#は基本的に廉価盤に付けられるもので、アルバムによっては移行時にジャケットの作りや紙質をより低コストなものに変更される(なかには最初からPC#で発売されたアルバムも存在する)。
このようなものの常で「ジャケットはPC#に変更済みだが盤のカタログ#は未変更」というような過渡期のレコードが存在したりもするのだが、この”Club Ninja”に関してはそういった過程を経ず在庫のレコードにシールを貼ってさっさとPC#に変更してしまったらしいことが伺える。つまり、それだけ売上がレコード会社の想定を下回ったものと考えられる。盤はもちろんFC#で、マトリクスは両面ともばっちり”-1"なところが涙を誘う。
 
 

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米Columbia、PC(FC) 39979。ウムラウトは?
  • マトリクス"PAL 39979-1B"/"PBL-39979-1A"(両面手書き
  • 両面に手書きで"Precision"と"P(AP)"
 
"Precision"はハリウッドのマスタリング・スタジオPrecision Lacquer(後にPrecision Masteringと社名変更)のクレジット。
"P(AP)"がなんなのか判らない。Precisionのカッティング・エンジニアか、あるいはプレス工場か・・・
 
アルバムはLPと同時にCDでも発売されたが、そちらは未聴。
加えて、UK盤は別ミックスかつ別デザインのインナーだったらしく非常に気になっているのだが、残念ながら今のところ未確認である。
このLP単体で主観的に評価すると、けっこうなボリュームまで破綻せずに鳴らせる良質なレコードであると言える。自分のレコードやCDの評価基準は基本的に「(その時々の再生環境で)大音量で気持よく鳴らせるかどうか」に尽きるので人様の参考にはならないと思うけど。
 

 

Club Ninja

Club Ninja

 

長らく入手困難となっていたが、2009年ついにCDがリマスター再発された(音源はUS Mix)。

現在ではBÖCのColumbiaアルバム全集"The Complete Columbia Albums Collectiön"にも収録され格段に入手しやすくなった。今こそ再評価の時である。
Blue Oyster Cult Complete Columbia Albums Collection

Blue Oyster Cult Complete Columbia Albums Collection

 

 

エリック・ヴァン・ラストベーダーの『ザ・ニンジャ』は米国ではけっこうな人気がありシリーズ数作が刊行されているが、日本では1982年に先述した第一作の翻訳が出版されたのみのようだ。ニンジャスレイヤー人気に乗じてうっかり文庫化されたりしないものかね?

ザ・ニンジャ

ザ・ニンジャ