Midnight Mushrumps / Gryphon

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Midnight Mushrumps / Gryphon (1974)

A: Midnight Mushrumps
B1: The Ploughboy's Dream
B2: The Last Flash of Gaberdine Tailor
B3: Gulland Rock
B4: Dubbel Dutch
B5: Ethelion

Richard Harvey: Recorders (Sopranino, Descant, Treble, Tenor), Krümhorns (Soprano, Alto, Tenor), Harmonium, Pipe Organ, Grand Piano, Harpsichord, Electric Pianos, Toy Piano, Keyboard Glockenspiel, Mandolin, Vocals
Brian Gulland: Bassoon, Bass Krümhorn, Tenor Recorder, All Keyboards on "Gulland Rock", Vocals, Laugh and Candlestick Rotation
Graeme Taylor: Guitars (Acoustic, Semi-Acoustic, Classical, Electric, 12-String), Vocals, Raincoat
Philip Nestor: Bass Guitars, Vocals
Dave Oberié: Drums, Timpani, Percussion, Lead Vocals, Headache and Candlestick

Produced by Gryphon
Engineered by Dave Grinsted
Recorded at the Chipping Norton Recording Studio, Oxfordshire, January 1974

1974年4月リリース。古楽プログレ・バンドGRYPHONの2ndアルバム。

新たにベーシストとしてフィリップ・ネスターを迎え、同年1月にオックスフォードシャーのChipping Norton Recording Studioにて制作された。

 


 

ベーシストの加入が一定の効果を上げ、前作とくらべて全体的にリズムが力強く、ときにロック的とすら言えるアルバムとなった。

フィリップ・ネスタ自身の実力という面でも、エレキベースを組み込んだアンサンブルの完成度という面でも申し分ない。個人的にはQUEENの"The Millionaire Waltz"あたりを連想したり。

また、前作では伴奏にまわる場面が多かったギターと鍵盤楽器の比重が増し、かわりにブライアン・ガランドとリチャード・ハーヴェイによる木管の絡みが減ったことも大きな変化だろう。「力強い」という印象は、ベースのプレイや音色だけでなくこうした全体的なバランスの変化からも来ているのだと思われる。木管(特にトラッドやバロックにおけるリコーダー)好きの自分的には少々残念なところでもあるんだけど。

 

A"Midnight Mushrumps"

美しいテーマが象徴的に奏でられる、A面を占める楽曲。

ウィリアム・シェイクスピアの国王一座における最終作『テンペスト The Tempest』の付随音楽という制作依頼を受けて、リチャード・ハーヴェイによって作曲された。

1974年4月にシェイクスピア劇で有名なロンドンのThe Old Vicで使用され好評を博し、同年7月のイブニング・コンサートではバンド自ら演奏。イギリスの国立劇場でロックバンドがコンサートを行った史上初にして唯一の例らしい。

この一連のイベントはGRYPHONというバンドのひとつの到達点であり、楽曲そのものもそれに相応しい傑作である。自分は一時期これと1stにハマり込んでずっと聴いてたことがあるぐらいなので、けっして冷静な評価ではないけど。

ちなみにアルバム・タイトルでもある"Midnight Mushrumps"というフレーズは、『テンペスト』劇中においてプロスペローの唱える呪文の一節などで登場する(あいまい)。

 

B1"The Ploughboy's Dream"

スティーブ・ラウドによって編纂されたRoud Folk Song Index掲載のトラディッショナル・ソング(Roud 1545)。ここではGRYPHON流にアレンジが施されている。

このアルバム唯一のヴォーカル入り。

 

B2"The Last Flash of Gaberdine Tailor"

グレアム・テイラーのペンによる、GENTLE GIANTばりのアレンジ力と演奏力で見事に完走してみせる楽曲。

 

B3"Gulland Rock"

ブライアン・ガランドが作曲とすべてのキーボードを手掛けた作品。

曲名からしてとうとうGRYPHONが本格的なロック・チューンに挑戦かと思いきや、思索的とでもいうような独特の曲調で逆にびっくりする。

後半ギターが盛り上がり舞曲っぽくなっておしまい、かと思いきやもうちょっとだけ続く。

 

B4"Dubbel Dutch"

グレアム・テイラー作曲。

このバンドを説明する際によく使われる(ような気がする)「トラッドを現代に蘇らせた」という表現にもっとも近い印象の楽曲じゃないだろうか。

めまぐるしく曲調を変化させていく様はまさにプログレ的である。

 

B5"Ethelion"

1stアルバムでは重要な位置を占めていた木管アンサンブルが大幅に削減されてしまった当アルバムにおける、貴重な木管分補給曲(謎)である。

Wikipedia等ではトラッドのアレンジとクレジットされていることもあるが、実際のクレジットはバンド名義。

とりあえず冒頭の笑い声のあとに現れる一連のフレーズは、16世紀フランスの音楽印刷者ピエール・アテニャン Pierre Attaingnantによって今日に伝わる"Tourdion"のようだ。この楽曲はジョン・レンボーンやリッチー・ブラックモアも取り上げている。

ドラムを挟み後半戦(?)、ギターに導かれまずリコーダーで印象的なテーマが示された後、楽器を替えながら反復しつつ盛り上がっていく。こういうの大好きです。

後半のフレーズにも元ネタがあったりするのかもしれないのだが、ちょっとわからない。

 

1stアルバムはトラディッショナル・ソングを中心に自作曲を織り交ぜる構成だったが、今作では自作曲が中心になりトラッドは2曲のみとなっている。

リチャード・ハーヴェイが手掛けたA"Midnight Mushrumps"の完成度は言うまでもないが、グレアム・テイラーが単独クレジットで2曲(しかもどちらも古楽プログレッシブ・ロックを絶妙に織り交ぜた、以降のバンドの方向性を決定づけるような作品)を提供していることこそ特筆すべきだろう。

総括すると、次作"Red Queen to Gryphon Three"と並んで最高傑作に推されることが多いのも納得の充実した内容である。

 

ところで、メンバーの使用楽器クレジットでブライアン・ガランドの"Laugh"はまあまだわかるとして、デイブ・オベールの項目にもある"Candlestick"とか"Headache"、グレアム・テイラーの"Raincoat"ってのはいったいなんなんだw

 

 

このアルバムの英国盤ジャケットはラミネート加工が施されており、さらに初回盤には8ページのブックレットが付属したらしい。らしいってのはつまり持ってないわけだが。

内容が気になるところ。1stアルバムには見開きで掲載されてた楽曲解説とかあったらいいな(願望)

 

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Transatlantic、TRA 282。オリジナルのレーベルデザインから"STEREO"表記の位置やフォント等細部のレイアウトが変更されている。

  • マトリクス"TRA 282-A-3"/"TRA 282-B-3"
  • "A2M"/"A2A"
  • A面のみ"PORKY"の書き込み

 

見ての通り、手持ちの盤はA面のみジョージ・ペッカムによるカッティングで、B面は切り直された後である。

そのためかA面とB面でかなり音質に差がある。ありすぎると言ってもいい。

具体的には、"PORKY"印のあるA面の音がぶっちゃけわr…もとい、カッティングレベルが低いばかりで鳴るべきところですらろくに鳴らない、というような具合になっている。

この盤に関してはB面の方がカッティングレベルもそれなりにありつつ、上から下まで破綻無くきっちりと鳴る印象。

べつにジョージ・ペッカムなら常に優れているとも思わないが、この盤はわりと残念な感じである。

ただB面はすでに切り直されているということは、A面だって相当使い古されているはず。

加えて、英初回盤のマトリクスそのものは未確認なものの、Discogsに英初回スタンパーを輸入してプレスしたらしいニュージーランド盤のマトリクスが記載されており、これは両面ジョージ・ペッカムのクレジットがあるもののマトが"2"でなおかつ"PORKY WRITES AGAIN"/"PECKO"と、明らかに手持ちの盤とは異なる。

つまり、このアルバムのPORKY盤は2つあった!(大げさ)

さらに言うなら、初回盤のマトが両面"2"でペッカム自ら"PORKY WRITES AGAIN"とか書いているということは、ボツになった両面マト"1"でPORKY印のテストプレスがどこかに存在する、ということではないだろうかっっ!!

まあ知っている人からしたら今更な話題なんだろうけど、ちょっと盛り上がってしまうのであった。

つーかニュージーランド盤、ふつう輸入するならスタンパーじゃなくてメタル・マザーだと思うんだけどそのあたりどうなんだろう……

 

 

Midnight Mushrumps

Midnight Mushrumps

 

英フォーク系再発レーベルTalking ElephantからのCDリイシュー。

自分は未聴だけど同レーベルが出した1stアルバムのリイシューは音質的に十分なものだったんで、こっちも期待できるんじゃないだろうか。